橋梁など大型インフラ構造物のモニタリング用高精度カメラを製品化
—遠隔・非接触のモニタリングで、維持管理の高度化・効率化を図る—
2018年09月5日

DSMC-100A
株式会社共和電業(本社:東京都調布市、代表取締役:舘野 稔)はこのたび、NEDO プロジェクトの成果をもとに、各種構造物の奥行き方向を含むXYZ方向の微小変位を1 台のカメラで多点同時に高速で測定するサンプリングモアレカメラを開発し、本日販売を開始します。このカメラを用いることで、遠隔・非接触で橋梁など大型インフラ構造物のモニタリングが可能となります。今後、インフラの維持管理・更新の高度化・効率化を図り、作業時間の短縮や通行規制などの利便性低下の抑制など、人材・技術・財源不足の解決への貢献が期待できます。
概要
国内の多くの橋梁や道路、鉄塔などの社会インフラは、建設から50年以上が経過し、インフラ維持管理・更新のための人材不足やコスト増大の克服が社会課題とされています。そこで、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、既存インフラの状態に応じて効果的で効率的な維持管理・更新などを図るため、的確にインフラの状態を把握できるモニタリングシステムの技術開発プロジェクト※を推進しています。
このプロジェクトでは、株式会社共和電業、国立大学法人福井大学、ジェイアール西日本コンサルタンツ株式会社、4Dセンサー株式会社で構成する研究チーム※がカメラ画像を用いた高精度のインフラモニタリング技術の開発に取り組みました。従来、インフラ構造物の微小変位測定は人が直接現場に測定機器を取り付けるなどして行ってきたため、足場設置などのコスト負担が大きいほか、機器の設置が可能で人の手が届く箇所でなければ作業しにくいなどの課題がありました。そこで、研究チームは、遠隔から非接触のモニタリングを実現するために、高精度なカメラ画像による解析技術の開発を進めました。この開発成果をもとに、株式会社共和電業は、サンプリングモアレ法※による高精度なカメラ画像で、各種構造物の奥行き方向を含むXYZ方向の微小変位を1台で多点同時に高速で測定するサンプリングモアレカメラDSMC-100Aを開発しました。
サンプリングモアレカメラにインフラ構造物の測定現場のニーズに合致した機能を開発して実装したことで、サンプリングモアレカメラの適用範囲を拡大し、従来のセンサ等を使用する測定方法と比較して、測定機器の取り付け・配線作業や足場の設置・撤去といった数時間から数日におよぶ測定以外の作業の解消、通行規制を実施しないと測定できなかった橋梁等での通行規制不要の測定、河川等で橋梁直下や近傍に測定機器が設置できない場所での遠望からの測定の実現といった、インフラの維持管理・更新の高度化・効率化を図ることができ、高度な技術を持った人材・財源不足の解決への貢献が期待できます。株式会社共和電業は、サンプリングモアレカメラの販売を開始します。また、共和電業グループ会社でのサンプリングモアレカメラを使用した受託計測事業も実施していきます。
※プロジェクト名:インフラ維持管理・更新等の社会課題対応システム開発プロジェクト(2014年度~2018年度)
NEDOホームページ
※研究テーマ名:位相解析手法を用いたインフラ構造物用画像計測システムの研究開発(2014年度~2018年度)
実施者:国立大学法人福井大学、株式会社共和電業、ジェイアール西日本コンサルタンツ株式会社、4Dセンサー株式会社
※サンプリングモアレ法:格子画像のサンプリングにより発生するモアレ縞の位相を解析して変位を求める方法
開発したサンプリングモアレカメラの特長
1. XYZの3方向の変位を遠望から1台のカメラで簡単測定
本開発装置は測定対象物と離れた場所からの測定ができます。河川橋や跨線橋などの橋梁下部といったアクセスや計測機器の設置が困難な場所においても測定可能で、測定期間中の通行規制の実施などによる利便性の低下が生じません。また、本プロジェクトでアルゴリズムを新開発し1台のカメラでの面外変位測定※を可能としたため、装置の設置場所を限定せず、さまざまな現場環境に対応できます。
※面外変位測定:撮影した画像の奥行き方向(視線方向)の変位の測定。従来は2台以上のカメラが必要であった。
2. 高速撮影(最大500fps※以上)が可能
カメラ内部でのDSP※処理による500fps以上の高速撮影で、構造物の固有振動数の変化や高速車両通行時の橋梁や床版たわみなどの動的変位のピーク値も逃さず捉えることができます。
※fps (flame per second):1秒間に撮影できる画像の枚数。
※DSP(digital signal processor):デジタル信号処理用のプロセッサ。
3. 測定中のリアルタイムモニターによる波形確認
測定中の変位データが多チャンネル同時にモニタリングできるので、収録データの異常や構造物の現在の状況を現場で即座に確認することができます。そのため、測定作業のやり直しなど、データ処理・解析までの手戻りを防ぎ、効率の良い測定ができます。
4. 24時間以上の連続測定にも対応
長期連続モニタリングに対応した定点観測モードにより、長期無人測定を行うことができます。年間を通した構造物の変状測定や災害発生時の遠隔監視システムの構築も可能です。